賃上げで人材開発支援助成金が増える!最新の「賃金要件」のルールと申請書類を分かりやすく解説!

Update
・2025.04.28 / 2025年4月の制度改正内容を反映いたしました
昨今の継続的な物価上昇を背景に、大手企業から中小企業まで賃上げが加速しています。東京商工リサーチが2023年度に実施した「賃上げに関するアンケート」調査(第2回)によると、大企業で85.5%(478社中、409社)、中小企業でも80.0%(3,653社中、2,924社)が賃上げを実施すると回答しており、IT企業(情報通信業)でも80.4%(235社中、189社)の企業が賃上げ実施予定となっています。
企業にとっては苦しい状況となる賃上げですが、実は賃上げのタイミングに合わせて人材開発支援助成金を上手に活用すると、助成金額を増額できることはご存じですか?
エンジニアの採用・育成コストの削減のために厚生労働省の「人材開発支援助成金」を活用するIT企業は多いと思いますが、2023年度からは一定の賃上げの要件を満たせば助成金額を大きく引き上げられる制度が新設されています。
過去にも労働生産性を向上させた企業/事業主に対して助成額を割り増しする制度(以下「生産性要件」)がありましたが、申請ハードルが高く、ITCOLLEGEにのお客様でも活用する企業は多くはありませんでした。
賃金要件は生産性要件と比べると申請のハードルが低くなっているため、少しでも助成額を上げたい場合にはぜひご活用いただきたい制度です。
本記事では、人材開発支援助成金の「賃金要件」の達成基準と、賃金要件が適用される助成金コースを解説。賃金要件について調べている方は、ぜひ最後までお読みください。
人材開発支援助成金についての詳細は、助成金サポートページでも解説しております。
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人材開発支援助成金の「賃金要件」とは?
助成金のコースによって助成率の違いはありますが、シンプルに言えば賃金要件とは「研修後に対象社員の給与を+5%以上増額すると助成金額が増える」という仕組みです。
従来の「生産性要件」では、会計年度ごとの勘定科目を人件費(給与手当・賞与・通勤費・法定福利費など)や減価償却費、動産・不動産賃借料など細かく算出して比較する必要がありましたが、賃金要件ではシンプルに「賃上げ前後3ヶ月間の賃金の総額」を算出・比較します。

たとえば新卒エンジニアを採用し、研修期間中(4~6月)に初任給22万円を支給していたところ、研修修了後に賃上げを行い新卒全員に対して月給23.1万円を支給した場合は、経費助成・賃金助成・OJT実施助成額が割り増しされます。
【廃止】生産性要件 | 【新設】賃金要件 | |
助成対象 | 企業の労働生産性を向上した事業主 | 社員の賃上げを行った事業主 |
割増支給の対象 | ・経費助成 ・賃金助成 ・OJT実施助成 | ・経費助成 ・賃金助成 ・OJT実施助成 |
申請条件 | 直近の会計年度における「生産性」と 3年度前の生産性を比較して6%、 または1%以上・6%未満(※)伸びていること ・直近の会計年度における生産性 ・3年度前の生産性 | 毎月決まって支払われる賃金について、 研修終了日の翌日から期間して1年以内に、 すべての対象社員の賃金が5%以上増加していること ・賃金改定後3ヶ月間の賃金総額 ・改定前3ヶ月間の賃金総額 |
申請期限 | ー | すべての対象労働者に対して、 要件を満たす賃金を3ヶ月継続して支払った日の 翌日から起算して5ヶ月以内に、 割増助成分のみを別途申請する必要があります。 |
以下のいずれかに該当する場合は、賃金要件を利用できません
・毎月決まって支払われる賃金※ の増額後に、合理的な理由なく賃金を引き下げる場合
・合理的な理由なく、賃金以外の諸手当を引き下げて賃金総額を引き上げる場合
※労働協約、就業規則または労働契約等において明示されている「基本給及び諸手当」。
うち諸手当には、労働と直接的な関係が認められ、労働者の個人的事情とは関係なく支給される手当が該当。
残業手当など月ごとに支給有無が変動する手当などは除外する。
人材開発支援助成金で、賃金要件が適用される助成金コース
ITCOLLEGEをはじめITエンジニアの研修でご利用いただける助成金コースのうち、賃金要件の対象となるのは以下の3種類となっています。本記事では、それぞれの助成金コースで賃金要件を満たした場合の経費助成・賃金助成・OJT実施助成率をご紹介します。
- 【OFF-JTが対象】人材育成支援コース 人材育成訓練
- 【OFF-JT+OJTが対象】人材育成支援コース 有期実習型訓練
- 【OFF-JT+OJTが対象】人への投資促進コース 情報技術分野認定実習併用職業訓練
デジタル・DX人材の育成に対して最大1億円が支給される事業展開等リスキリング支援コースをはじめ、人への投資促進コースの中でも高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練など、あらかじめ高率助成として設定されている助成金は賃金要件の対象外のため注意が必要です。
1.人材育成支援コース 人材育成訓練

対象社員 | 経費助成 | 賃金助成 |
正社員雇用の場合 | 60%(45%) | 1,000円(500円) |
契約社員雇用の場合 | 85%(85%) | 1,000円(500円) |
2.人材育成支援コース 有期実習型訓練

対象社員 | 経費助成 | 賃金助成 | OJT実施助成 |
契約社員雇用の場合 | 75% | 1,000円(500円) | 13万円(12万円) |
3.人への投資促進コース 情報技術分野認定実習併用職業訓練

研修の対象社員 | 経費助成 | 賃金助成 | OJT実施助成 |
正社員/契約社員 | 75%(60%) | 1,000円(500円) | 25万円(14万円) |
賃金要件の申請タイミングと提出書類
通常、人材開発支援助成金は研修の終了日から起算して2ヶ月以内に支給申請を行うことになっていますが、支給申請を行った後に追加で賃金要件による引き上げを希望する場合は、すべての対象社員に対して、要件を満たす賃金を3ヶ月間継続して支払った日の翌日から起算して5ヶ月以内に追加で以下の書類を提出します。
通常の支給申請を行った後に書類を提出しますが、対象社員の賃金に関する書類だけを提出すれば良いので、手続きの準備はそこまで必要ありません。
様式 | 支給要件確認申立書(共通要領様式第1号) |
様式 | 支給申請書(様式第4-1号) |
様式 | 賃金助成およびOJT実施助成の内訳(様式第5号) |
様式 | 経費助成の内訳(様式第6-1号) |
様式 | 賃金要件等確認シート(様式第16号) |
添付書類 | 割増助成の元となって訓練で通常分の助成を受けた時の「支給決定書」の写し |
添付書類 | 賃金増額改定後3ヶ月の賃金台帳等 |
添付書類 | 賃金増額改定前後の雇用契約書 |

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最後までお読みいただきいただき、誠にありがとうございます。
賃金要件の仕組みを活用すると助成金額を大幅に引き上げることができますが、社員の採用・育成にコストが掛かっている中でさらに賃上げも行うとなると、企業にとっては負担になってしまうこともありますよね。
自社に合った助成金コースを選べば、賃金要件の仕組みを使わなくても、研修料金の大部分を補填できる場合もあります。前述の「人材育成支援コース 人材育成訓練」を活用する場合も、中小企業のお客様なら賃金要件を達成しなくてもITCOLLEGEの研修料金の90%以上を助成金で補えますよ。
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