限られた研修期間で、自社のシステム開発知識を網羅させることの難しさ
アルティウスリンクは「KDDIエボルバ」と「りらいあコミュニケーションズ」が経営統合し、2023年に新たに発足した会社です。
弊社ではコンタクトセンター・BPOサービスのほか、インフラ・システムの設計構築から保守までを担うITソリューション事業を展開しており、現在では2,000名を超えるエンジニアが在籍しております。私はKDDIエボルバ時代に入社して以来、主にこのITソリューション事業に配属となるエンジニアの採用・人材開発を担当しております。
ITソリューション事業は、社会インフラを担う総合通信事業者であるKDDIの通信インフラをヒューマンリソースの側面から支えるべく発足した部門です。法人向け広域ネットワーク・サーバーシステムの提案からコアネットワークの構築・運用、大規模システムの上流工程・開発・運用、システムインテグレーションと事業領域を拡大し続け、現在では幅広い法人のお客様のIT戦略をサポートしています。
ITCOLLEGEには、私が入社した当初の2022年からプログラミング研修を委託しており、2025年度で4年目になります。2022年当時は主に未経験の中途エンジニア向けの研修を中心に依頼しており、2023年度から新卒エンジニア向けのオーダーメイド研修も導入させていただきました。

弊社では例年、新入社員研修中に新卒エンジニアの配属検討を開始し、8月から現場配属となります。上流フェーズのみを担当させていただくプロジェクトも多く、直近では全体の9割が上流特化となっています。
実装まで担当するプロジェクトは1割程度ではありますが、開発言語としてはJavaを中心にPython、Node.jsなど多岐に渡ります。特にアジャイル開発を行っている部署では、AWS環境でPython、React、Nodeなどを利用したWebシステム構築が中心となっています。
ITCOLLEGEに研修を依頼する前は、私が社内講師としてこれらのプログラミング学習を含む新入社員研修全般を担当していました。研修時点ではまだ配属先が決まっていないこともあり、当時は「新卒エンジニア全員に、自社のシステム開発全般を覚えてもらう」というところをゴールに設定していましたね。
しかし、自社の開発技術に合わせて指導できる反面、自社内研修にはやはり課題もありました。例年20名ほどの新卒エンジニアを指導していましたが、プログラミング未経験者から経験者までレベルにバラつきがあるため、一斉に指導するにはリソース面の負担が大きい。また、私自身もエンジニア出身とはいえ、限られた研修期間で自社の開発技術を網羅的に教える難易度の高さもありましたね。そこで、当時から中途エンジニアの研修を依頼していたITCOLLEGEに、丸ごとお任せすることにしたんです。
トレンド技術よりも、もっと根底に押さえておくべき知識がある
弊社では「システム開発の根本となる技術を知る」という研修テーマを掲げ、現在まで研修を設計してきました。新入社員研修の段階ではキャッチーなトレンド技術だけをインプットするよりも、環境構築からデプロイまでの一連の流れを経験してもらう方が「伸びる」という絶対的な感覚がありますね。
もちろん今後も生成AIのように技術トレンドは生まれていきますし、そういったモダンな技術・ノウハウを伝えることも実務に入る上では重要であるとは思います。しかし、教育のプロとしては「それ以前に、もっと根底に押さえておくべき知識がある」と考えています。

システム開発の流れやアーキテクチャを学ぶ上では、まず土台となる変数、型といったものから体に慣れさせることも大事な過程です。PythonやJavaScriptなどは柔軟性が高い反面、言語としての性質を理解しないまま身に付いてしまうこともあります。その点、初期段階で学ぶ言語としてJavaは最も適していると思います。Javaでのベーシックなプログラミングを学び、土台を整えてから高度な技術、細かなノウハウをキャッチアップしてもらうことで、より技術への解像度が高まるのではないでしょうか。
ITCOLLEGEなら要件定義からデプロイまで、システム開発の流れをすべて経験できる
ITCOLLEGEの長所は、なんと言ってもシステム開発の要件定義から実際のデプロイまで、 一連の流れを経験できる点です。
2022年以前は幅広い知識を養う研修を心がけていましたが、いまいち「自分たちの手でシステムを作っている」感覚が養えていなかったように感じます。例えばプログラミングを学ぶにしても、環境構築をせずに学習ツール上でコードを書いてそのままデプロイできるようなサービスだと、本当の意味での開発スキルは身に付かないと考えたんです。実際にソースファイルを扱って、リリースして、という段階を経験しなければ意味がないのではないかと。
コンテンツは充実しており「知識を詰め込む」という面では役立ちましたが、やはりエンジニアとしての自力をつけさせる上では開発技術を絞ってでも、より深くまで学ばせた方が良いと考えています。
その点、ITCOLLEGEでは実際にJavaの環境構築にはじまり、システムのリリース、開発チームでのプレゼンテーションまでワンストップで経験を積める。実際の開発に即してこの一連の経験ができるのは、非常に効果的だと感じています。

新入社員研修のカリキュラムは2023年度の導入から毎年ブラッシュアップしており、2025年度はJavaでの個人開発・チーム開発力とAWS認定クラウドプラクティショナーレベルの知識のキャッチアップを重視した2.5ヶ月間のコンテンツを検討しているところです。
自社が重視する技術要素に応じて、学ぶ順番や学習ボリュームを細かくコントロールできるのは、オーダーメイド研修ならではです。ITCOLLEGEはエンジニア講師が企画段階から打ち合わせに参加し、前年度の結果を踏まえて改善提案も受けられるので、年々学びやすくなっている感覚がありますね。
実際に、ITCOLLEGEを導入してから社員の成長を明確に実感できるようになりました。研修開始当初は不安を抱えていた未経験者もいましたが、厳しい研修を乗り越えたことで彼らとしても手応えを感じている様子でした。自分の手でアプリケーションを完成させた経験を得たことで、かなり自信もついたのではないかと思います。
学習単元 | 2023年度 合計42.5日間 | 2024年度 合計43日間 | 2025年度 合計46日間 |
---|---|---|---|
オリエンテーション | 1日間 | 1日間 | 1日間 |
IT基礎 | ー | ー | 2日間 |
AWS | 6日間 | 6日間 | 7日間 |
Git | 1日間 | 1日間 | 1日間 |
Java言語仕様 | 7日間 | 7日間 | 7日間 |
オブジェクト指向 | 7日間 | 7日間 | 7日間 |
データベース・SQL | 6日間 | 6日間 | 6日間 |
個人開発 | 5日間 | 4.5日間 | 4.5日間 |
チーム開発 | 9.5日間 | 10.5日間 | 10.5日間 |
甘やかしすぎない環境で、「食らいついていく」努力の姿勢が養われた
また、日報ひとつとっても、講師が一人ひとり非常に細かく的確に指導してくれます。これが報告書作成のトレーニングにもなっており、 ITCOLLEGEを受講したことで報告書のクオリティが圧倒的に高くなっています。ビジネススキルが高まったことはもちろん、ITCOLLEGEを受講したメンバーは全員がとても礼儀正しく、積極的に業務に取り組んでいることにも非常に感激しました。
甘やかしすぎない環境をつくったことで、開発技術はもちろん、ビジネスマインドやビジネススキルの面でも、新卒エンジニア全員が求められる水準に食らいついていく努力の大切さを学べたこと。未経験の領域も積極的に調べてキャッチアップしていく習慣がついたこと。フィードバックを真摯に受け止めて、自分の成果を改善していくこと。厳しい道のりでも、自分の力で追いつくという成功体験。そんな経験は、仕事に向き合う心構えを学ぶ上でもとても大事なことだと思っています。
もちろん、まだまだ現場のエンジニアからは厳しいフィードバックもあります。しかし私自身としては「ITCOLLEGEを受講したメンバーは、とても成長している」という感覚がありますね。やはり感じるのは、ITCOLLEGEで開発技術とビジネスマインドを学び、自社内研修で上流工程をみっちり学んだ、そんな彼らの仕上がりは相当なものになっているということ。おそらく他社の新卒エンジニアと比較しても、非常に良い成果が出ていると実感しています。

新卒エンジニアからも「すごく充実した研修だった」とフィードバックが
実際に本人たちに感想を聞いてみても、特に技術に明るいメンバーからは「研修のプロセスも良かったし、すごく充実した研修だった」というフィードバックがありました。全員が共通して、「この研修期間は絶対に必要だった」と話していました。未経験者からは「かなり大変だった」という意見もありましたが、その分達成感も大きかったようです。
また、私としてはデータベースの学習は非常に有効だったと感じています。実務では上流工程が中心のためデータベースに触れる機会は少ないですが、データベース周りの知識があることで開発そのものの解像度が上がると考えています。本人たちは研修で学んだ上で実務に入っているので、データベース知識がないとどれほど苦労するかイメージできないと思いますが、研修に盛り込んで良かった要素のひとつですね。
ITCOLLEGEを導入する前は、「どうシステムを開発していくか」というイメージがないまま配属になってしまっていました。その当時から考えても、ITCOLLEGEの研修を通してデータベースを含めどのような技術、流れでシステムが構築されていくかをイメージできたことで、配属後の立ち上がりにも大きく影響したと考えています。
今後のITCOLLEGEに期待していること
ちょうど今、2025年度の新卒エンジニア研修プランの相談に乗っていただいている真っ最中です。2023年度から例年20名規模のオーダーメイド研修を依頼していますが、細かな研修スケジュールの調整や指導方針などもすり合わせさせていただけるので、小回りが利いて非常に助かっています。
今年はLinux関連のカリキュラム追加や、AWS周りのカリキュラムのブラッシュアップも考えています。開発領域がメインの研修ですが、Webエンジニアに必要なLinux・AWSなどインフラ領域のカリキュラムも盛り込んでいただけるのは、インフラ研修も多数の実績があるITCOLLEGEの強みだと思いますね。今後も技術トレンドの変化や現場からのオーダーをもとにITCOLLEGEからアドバイスをいただきながら、新卒エンジニアにとってより良い研修を一緒につくっていきたいですね。

会社名 | アルティウスリンク株式会社 |
代表取締役社長 若槻 肇 | |
所在地 | 東京都渋谷区代々木2-2-1 小田急サザンタワー |
設立 | 1996年5月30日 |
資本金 | 1億円 |
社員数 | 約56,000人(連結) |
事業内容 | ・コンタクトセンター事業 ・バックオフィス事業 ・ITソリューション事業 ・その他関連事業 |